- Peperkoorn(2024)は、ボクシング・テコンドー・レスリングの五輪と世界ボクシング選手権の結果を、メタ分析(複数のデータをまとめて計算し直す方法)で調べました。
- Apollaro(2021)は、胴と頭の電子防具で得点を判定するテコンドーの1,327 試合を分析しました。
- Dijkstra(2018)は、柔道の国際大会45,874 試合を使い、青と白の柔道着と勝敗の関係を調べました。
- Li(2024)は、中国で武術の套路(決まった動きを続けて行う演技)を専攻する学生に、審判の立場で動きの質を採点してもらいました。
赤と青で組手の判定は変わるのかQ&A|審判の判定の偏りの研究
6,589 試合のうち赤の勝ちは50.5%で、全体として統計的に意味のある偏りはありませんでした(Peperkoorn(2024))。試合会場で赤と青の選手を見比べると、色が判定を左右するのか気になることもあります。色で採点が動く実験結果はありますが、勝敗で赤の優位が一貫しているわけではありません。 空手の組手で色と判定を調べた研究は見つからず、以下はテコンドー・柔道・ボクシングなどの試合と、武術の型に近い演技の実験を手掛かりにします。
空手の判定を考えるとき、審判は赤を有利に見るのか
Peperkoorn(2024)は、ボクシング・テコンドー・レスリングの五輪と世界ボクシング選手権の結果を、メタ分析(複数のデータをまとめて計算し直す方法)で調べました。全体の結果とは別に、2005 年より前の接戦に限ると、赤の勝ちは56.8%でした。著者は、色の影響が知られるようになったことや規則の変更で、小さな効果が勝敗に表れにくくなった可能性を挙げています。
Apollaro(2023)が五輪テコンドーの895 試合を調べた研究でも、結果は条件によって違いました。審判が手で採点していた時代には男子で赤の勝ちが多かった一方、女子の一部の回戦では青の勝ちが多くなっていました。赤の側に付くことだけで、競技上の優位を得るという結論ではありません。男女や回戦をひとまとめにせず、どの条件で差が出たかまで読む必要があります。
電子採点なら色と勝敗の関係は変わるのか
Apollaro(2021)は、胴と頭の電子防具で得点を判定するテコンドーの1,327 試合を分析しました。全体では、防具の色と勝敗に関係はありませんでした。大会や階級ごとには赤の勝ちが多い組も青の勝ちが多い組もあり、向きはそろっていません。
手で採点する時代と電子採点の時代を比べると、採点の仕組みが色の研究で重要になる理由が見えてきます。以下の表では、試合結果を調べた研究と、人が動きを採点した実験を並べています。
| 研究(著者 年) | 競技 | 試合数・人数 | 採点の方法 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| Peperkoorn(2024) | ボクシングなど | 6,589 試合 | 大会・時代が混在 | 全体で赤の勝ちは50.5%、有意な偏りなし |
| Apollaro(2023) | テコンドー | 895 試合 | 手の採点と電子採点 | 手の採点の時代に男子で赤の勝ちが多い |
| Apollaro(2021) | テコンドー | 1,327 試合 | 胴・頭の電子防具 | 全体で色と勝敗の関係なし |
| Dijkstra(2018) | 柔道 | 45,874 試合 | 国際大会の判定 | 色による勝敗の差なし |
| Li(2024) | 武術の演技 | 最初の実験は男女各72 人 | 学生が審判役で採点 | 赤い服の選手に高い点 |
| Myers(2006) | ムエタイ | 70 試合 | 複数のジャッジ | 国籍による採点差、勝敗への影響は限定的 |
柔道で青の選手が勝ちやすいという話は本当か
Dijkstra(2018)は、柔道の国際大会45,874 試合を使い、青と白の柔道着と勝敗の関係を調べました。先に呼ばれた選手の勝ちは多かったものの、柔道着の色による勝敗の差はありませんでした。注目したいのは、呼び出し順と色を切り分けて調べた点です。
同じ色の選手が多く勝っていても、その色と一緒に割り当てられている条件を点検する必要があります。色の集計だけでは足りません。柔道の研究で呼び出し順を扱ったように、比較する組の作り方まで見ると、色に原因を求めてよいかを吟味できます。
人の目による採点にはどんな偏りが見られたか
Li(2024)は、中国で武術の套路(決まった動きを続けて行う演技)を専攻する学生に、審判の立場で動きの質を採点してもらいました。同じ動きでも赤い服の選手への点が高く、男性の学生が女性の選手を評価するときに差が大きくなりました。ただし、これは実際の大会審判ではなく学生が画像や映像を採点した、小さな効果の実験です。
Myers(2006)が調べたムエタイの70 試合では、選手と同じ国のジャッジが自国の選手に約1 ラウンド分多く点を付けていました。一方、中立のジャッジが多く参加していたため、この偏りが勝敗に及ぼす影響は限られていました。こちらは色ではなく国籍の研究で、採点に差があることと試合の勝者が変わることを分けて考える材料になります。
子どもの試合を見た保護者や初出場の大人が結果を振り返る際も、色の印象に加え、得点の記録や採点の仕組みに目を向けるとよいでしょう。研究を読み比べる際には、誰が何を採点し、どの段階で差が出たかが手がかりです。
よくある質問
赤い防具を選ぶことを勝つための対策にしてよいか
研究全体からは、赤い防具を勝つための対策として勧める根拠は得られていません。古い接戦で赤の勝ちが多かった結果と、電子採点の試合全体で色との関係がなかった結果を合わせて読む必要があります。
電子採点の研究で関係がなければ、人の採点も同じか
電子防具を使った試合の勝敗と、人が演技を見て付ける点は、別の測定です。電子採点の結果を読むときも、人の目が評価する部分と機器が測る部分を区別します。
判定への疑問は色以外の何から振り返ればよいか
まず、勝敗だけの記録なのか、個々の採点まで残っているのかを分けて整理するとよいでしょう。得点差と最終的な勝敗を区別すると、ムエタイの研究のように、採点差がありながら勝敗への影響は限られたという結果も読み取れます。
この記事の限界
測定の中心は試合の勝敗で、色が審判の判断を変える過程を直接測ったものは限られます。学生が演技を採点した実験も含まれ、実際の組手とは評価者と課題が異なります。
対象の競技と採点制度には幅があり、国籍の分析は古い大会に限られています。子どもや成人初心者の空手の組手で、帯や防具の色によって判定がどれほど変わるかは、これらの研究からは定まりません。
参考文献
- Peperkoorn LS. Meta-analysis of the red advantage in combat sports. Sci Rep. 2024;14(1):30822.
- Apollaro G. The effect of the colour red in 20 years of Olympic taekwondo. Sci Rep. 2023;13(1):21780.
- Apollaro G. When Taekwondo Referees See Red, but It Is an Electronic System That Gives the Points. Front Psychol. 2021;12:787000.
- Dijkstra PD. Does Blue Uniform Color Enhance Winning Probability in Judo Contests? Front Psychol. 2018;9:45.
- Li J. Effect of the red uniform on the judgment of position or movement used in Wushu Routine, evaluated by practitioners of the modality. PLoS One. 2024;19(3):e0300893.
- Myers TD. Evidence of nationalistic bias in muaythai. J Sports Sci Med. 2006;5(CSSI):21-27.
技の名前を調べた次は、組手の痛みと礼儀を稽古場で確かめる
- 向く人: 技の名前や由来を知ったうえで、型と組手で実際に体を動かしたい大人
- 向く人: けがの防ぎ方と礼儀の教え方を見てから、子どもに空手を習わせたい保護者
- 向かない人: 相手を倒す技だけを早く覚えたい人
- 向かない人: 医師から打撃や接触のある運動を止められている人
このサイトはワールド極真会空手連盟 東京支部が制作しています。稽古場はオンザショア立川店(立川駅から徒歩1分・溶岩プレートの床のスタジオ)です。
よくある質問
赤い防具を選ぶことを勝つための対策にしてよいか
研究全体からは、赤い防具を勝つための対策として勧める根拠は得られていません。古い接戦で赤の勝ちが多かった結果と、電子採点の試合全体で色との関係がなかった結果を合わせて読む必要があります。
電子採点の研究で関係がなければ、人の採点も同じか
電子防具を使った試合の勝敗と、人が演技を見て付ける点は、別の測定です。電子採点の結果を読むときも、人の目が評価する部分と機器が測る部分を区別します。
判定への疑問は色以外の何から振り返ればよいか
まず、勝敗だけの記録なのか、個々の採点まで残っているのかを分けて整理するとよいでしょう。得点差と最終的な勝敗を区別すると、ムエタイの研究のように、採点差がありながら勝敗への影響は限られたという結果も読み取れます。