- 動きを覚える過程を、研究では運動学習と呼びます。
- Marković(2021)は、競技水準の高い空手選手14人による165回の逆突きを調べました。
- Brady(2004)は、練習する動きの組み合わせを扱った61研究から、139の効果量をまとめています。
- Ghadiri(2022)は、発達性協調運動障害のある12〜13歳の女子16人を対象にしました。
正拳突きは何と読み、なぜ繰り返すのかQ&A|反復の稽古と動きの覚え方の研究
早朝、窓から光が入り始めた部屋で、子どもが前の稽古で習った突きを思い出しています。横で見ている保護者には、同じ動きを続ける姿が、昨日とほとんど変わらなく見えるかもしれません。「正拳突き」は「せいけんづき」と読みます。なぜ空手の稽古では、この動きを繰り返すのでしょうか。反復は動きを確かめながら覚えるための練習ですが、上達を見るには回数とともに、動きの変化や後で再現できるかにも目を向けることが大切です。
同じ突きを繰り返すと、何を確かめられますか
動きを覚える過程を、研究では運動学習と呼びます。同じ課題を続けると、前の動きと今の動きを比べる機会を持てます。たとえば、指導者から伝えられた点を意識したときに、自分の動きがどう変わったかを見るという使い方です。反復の目的は、動きを覚えることです。
VencesBrito(2011)は、空手の経験者18人と未経験者19人の突きを比べました。調べたのは腕の動きと、筋電図という筋肉の働きを電気信号で捉える測定です。経験者では腕の動きの幅が小さく、筋肉の働き方にも違いがありました。見た目には似た突きでも、動き方には経験による違いが表れていたのです。
この結果を稽古の見方に生かすなら、数え終えた回数だけでなく、何を意識して繰り返したかを聞くとよいでしょう。「前よりできた」と子どもが言うときには、本人がどこに気づいたのかを聞けます。大人の初心者も、毎回の練習で確認した点を短く記録しておくと、次の稽古で指導者と話す材料になります。
速く突ければ、動きを覚えたことになりますか
Marković(2021)は、競技水準の高い空手選手14人による165回の逆突きを調べました。手の最高速度に着目して比べると、速い突きと遅い突きでは、体と手が動き出す順番に違いがありました。速度の違いを考えるときには、体の各部分が動くタイミングも関わるという知見です。測定の焦点は、選手が突きを出す際の時間的な組み立てにありました。
練習を見る際には、その場で速く動けることと、時間を置いてから思い出せることを分けて考えます。指導者の合図に合わせた直後の動きと、次の稽古で説明を聞く前の動きを比べると、確認する点が変わります。保護者が速さを競わせるよりも、習ったことを本人が思い出せるかを見守るほうが、練習の目的を共有しやすくなります。
違う動きを混ぜたほうが覚えやすいですか
Brady(2004)は、練習する動きの組み合わせを扱った61研究から、139の効果量をまとめています。効果量は、練習方法による差の大きさを共通の尺度で表す数値です。違う動きを混ぜた練習が後に残る効果は、大人で.50、年少の学習者で.10と、年少者では小さい結果でした。これは空手の研究ではないため、同じ突きの反復が最良とも、混ぜれば必ずよいとも結論づけられません。
練習の組み方を見比べるときは、次のように観察する場面を分けられます。同じ動きを続ける時間と、別の動きへ切り替える時間では、本人が考える内容も変わります。子どもが混乱しているときには、説明を聞き直せるかにも目を向けましょう。
| 練習の場面 | 見守るときの着眼点 |
|---|---|
| 同じ動きを続ける | 教わった点を意識しながら動けるか |
| 違う動きに切り替える | 次の課題を理解して取り組めるか |
| 次の稽古で再び行う | 前に教わった点を思い出せるか |
動きが不器用な子どもにも役立ちますか
Ghadiri(2022)は、発達性協調運動障害のある12〜13歳の女子16人を対象にしました。これは、体の動きをうまく組み合わせることが難しく、日常生活にも支障が出る状態です。参加者は8週にわたり、週3回、各75分の型の稽古に取り組み、運動能力の改善が見られました。型は、決められた動きを順に行う稽古です。
この研究で取り組んだのは、動きを順につなげる型の稽古でした。少人数の結果を受けて練習を考えるときには、本人が説明を理解できるか、難しいと伝えられるかを確かめることが先になります。できるまで繰り返させるだけではなく、課題を小さく分けて説明してもらうなど、参加しやすい方法を指導者と相談しましょう。
稽古への参加を考える際には、本人の痛みや疲れの訴えも聞きます。すでに肩や肘などに痛みがある人に、予定した回数を優先して続けさせる方法は向きません。練習を終えたあとも、楽しかった点と難しかった点の両方を話せるようにすると、次の課題を相談する材料になります。
よくある質問
家でも回数を決めて練習したほうがよいですか
家庭での練習は、指導者と目的や内容を共有してから考えるとよいでしょう。回数の記録に加えて、何を思い出せたか、どこで迷ったかを書き留めると、次の指導につなげやすくなります。
大人と子どもで練習を変えるべきですか
Brady(2004)のまとめでは、動きを混ぜた練習の効果の大きさに年齢層による違いがありました。年齢に加えて、経験や説明の理解、課題を切り替えたときの様子を見ながら、練習の組み方を相談するのがよいでしょう。
見学では、反復のどこを見ればよいですか
同じ動きを続ける間に、指導者が何を見て声をかけ、本人がどう受け止めているかに注目できます。回数を数える声の合間に、動きの変化や理解を支えるやり取りについて、何を確かめますか。
この記事の限界
対象は経験者や選手、特定の発達上の困難がある女子などに偏り、日本の子どもの初心者を長く追った研究は含みません。型の研究は少人数で空手をしない比較群がなく、突きの反復だけの効果や、けがの頻度、安全な回数も検証の範囲外です。この文章は研究を読むための解説で、個人の症状への医療上の助言に代わるものではありません。突きを繰り返して痛みや腫れが続く場合は、稽古を中断し、医療機関に相談してください。反復の途中で動きが崩れたとき、指導者は何を見て内容を調整しますか。
参考文献
- VencesBrito ほか. Kinematic and electromyographic analyses of a karate punch. J Electromyogr Kinesiol. 2011;21(6):1023-1029.
- Marković ほか. Use of IMU in Differential Analysis of the Reverse Punch Temporal Structure in Relation to the Achieved Maximal Hand Velocity. Sensors (Basel). 2021;21(12):4148.
- Brady. Contextual interference: a meta-analytic study. Percept Mot Skills. 2004;99(1):116-126.
- Ghadiri ほか. The effect of karate interventions on the motor proficiency of female adolescents with developmental coordination disorder (DCD) from high and low socio-economic status. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2022;14(1):121.
技の名前を調べた次は、組手の痛みと礼儀を稽古場で確かめる
- 向く人: 技の名前や由来を知ったうえで、型と組手で実際に体を動かしたい大人
- 向く人: けがの防ぎ方と礼儀の教え方を見てから、子どもに空手を習わせたい保護者
- 向かない人: 相手を倒す技だけを早く覚えたい人
- 向かない人: 医師から打撃や接触のある運動を止められている人
このサイトはワールド極真会空手連盟 東京支部が制作しています。稽古場はオンザショア立川店(立川駅から徒歩1分・溶岩プレートの床のスタジオ)です。
よくある質問
家でも回数を決めて練習したほうがよいですか
家庭での練習は、指導者と目的や内容を共有してから考えるとよいでしょう。回数の記録に加えて、何を思い出せたか、どこで迷ったかを書き留めると、次の指導につなげやすくなります。
大人と子どもで練習を変えるべきですか
Brady(2004)のまとめでは、動きを混ぜた練習の効果の大きさに年齢層による違いがありました。年齢に加えて、経験や説明の理解、課題を切り替えたときの様子を見ながら、練習の組み方を相談するのがよいでしょう。
見学では、反復のどこを見ればよいですか
同じ動きを続ける間に、指導者が何を見て声をかけ、本人がどう受け止めているかに注目できます。回数を数える声の合間に、動きの変化や理解を支えるやり取りについて、何を確かめますか。