この記事の要点- 指先を突いたときの痛みは、まとめて突き指と呼ばれます。
- ここで引いた 5 本は、同じ指のけがを扱っていても、問いがそろっていません。
- 指が動くから骨折していない、と決めることはできません。
- 指を突いた直後の応急の対応は、冷やすことと、動かさずに休ませることまでです。
組手で突き指をした子ども|指のけがと受診の目安の研究
組手のあとに子どもが指を押さえて保健室へ来たとき、冷やして様子を見ていいのか、それとも整形外科へ連れて行くべきか迷ったことはないでしょうか。保健室の流し台の前に座った子の指は、打った場所だけが少し腫れて、第二関節が曲がったまま戻りにくくなっていることがあります。突き指は病名ではなく、骨折や靭帯・腱のけがが混じりうる状態の呼び名なので、見た目だけで軽いと決めず、指先を自分で伸ばせるかと指の向きを先に確かめることが判断の出発点になります。
突き指という言葉は、指先を突いて痛めたという出来事を指すだけで、どの組織が傷んだかまでは教えてくれません。保健室のベッドの端に座らせ、両手を膝の上に置かせると、腫れている指とそうでない指の違いが見つけやすくなります。ここでは、手の外科に来た子どもの記録と、固定の方法を比べた試験を並べ、家庭でできる応急の対応と受診の線引きを整理します。読み終えるころには、保健室で何を見て、どこで病院に切り替えるかの目安が持てます。
突き指という言葉が包んでいるけが
指先を突いたときの痛みは、まとめて突き指と呼ばれます。しかしこの言葉は、どの骨や靭帯、腱が傷んだかを区別していません。指の骨は小さく、関節も腱も近い場所にあるため、同じ腫れ方でも、傷んでいる場所はいくつかに分けて考えます。槌指(指先の第一関節が自分で伸ばせなくなるけが)も、その一つです。
Vadivelu(2006)は、英国の手の外科の外来に来た 16 歳未満の子ども 360 人を前向きに数えました。手のけがのうち骨のけがが 65.5%(236 件)、軟部組織(骨以外の靭帯や腱、皮膚など)のけがが 33.3%(120 件)で、指の骨では基節骨(指の付け根に近い骨)の骨折が 67% と最も多くなっています。この集計は手の外科に来た子だけを対象にしており、家庭で冷やして済んだ軽い例は入っていません。スポーツは、年長の子どものけがの原因として多く挙がっていました。
同じ突き指でも、指先の第一関節が伸びない、第二関節が腫れて曲がる、指全体が横にずれる、といった違いがあります。どれが起きたかは、指を動かしたときの反応と、左右の指を見比べたときの向きで、ある程度まで絞れます。保健室で最初に見るのは、腫れの大きさより指の向きです。
突き指という言葉で片づけると、見た目が軽いけがほど、その後の確認が抜けやすくなります。指のけがは、突くだけでなく、ボールを受けたり、転んで手をついたりしても起きます。組手では相手の体に指が当たる場面があり、同じ指を繰り返し突く子もいます。同じ指を何度も痛める場合は、一度のけがとして扱わず、受診のきっかけにしてください。
5 本の研究を並べてわかること
ここで引いた 5 本は、同じ指のけがを扱っていても、問いがそろっていません。手のけがの全体像を数えた研究、診断の食い違いを数えた研究、固定の方法を比べた無作為化比較試験(くじ引きで組を分けて比べる試験)、外科医の経験を聞いた調査が混ざっています。並べて読むと、何がわかっていて何がまだ測られていないかの境目が見えます。
| 研究 |
対象 |
人数 |
設計 |
わかったこと |
わかっていないこと |
| Vadivelu(2006) |
手の外科に来た 16 歳未満 |
360 人 |
前向きに記録 |
骨のけが 65.5%、軟部組織 33.3%、基節骨の骨折 67% |
家庭で済んだ軽い例、空手の組手での頻度 |
| Chew(2012) |
17 歳以下で紹介された子 |
204 件 |
記録の振り返り |
スポーツが原因 70 件(39%)、診断の食い違い 8%(16 件) |
突き指全体の見逃し率、紹介されなかった子 |
| Weber(2019) |
関節の外の指の骨折と診断された子 |
99 人 |
無作為化比較試験 |
ずれの再発は隣の指の固定 1 人、副子(添え木)3 人 |
家で自己判断で固定した場合、ずれた骨折への一般化 |
| Handoll(2004) |
主に大人の槌指 |
278 人 |
無作為化試験を集めたレビュー |
6 週間以上の固定、言いつけを守ることの重要性 |
副子の種類の優劣、手術の適応、子どものデータ |
| Won(2014) |
外科医への聞き取り |
55 人 |
質問票調査 |
87% の外科医が隣の指の固定を使用、65% の外科医が守られにくさを経験 |
患者側の頻度、皮膚のただれが起きる割合 |
表の左から順に、扱っている集団が狭くなっていきます。Vadivelu(2006)と Chew(2012)は受診した子の記録で、Weber(2019)は画像で骨折と診断された子だけを集めています。Handoll(2004)と Won(2014)は治療の方法と現場の判断の話で、けがの起こり方を数えたものではありません。それでも、固定の選択と、その選択が守られにくいことは、家庭の判断に直接関わります。
見た目と動きだけで骨折を否定できない理由
指が動くから骨折していない、と決めることはできません。Chew(2012)は、骨折または骨折の疑いで専門病院に紹介された 17 歳以下の 204 件を振り返りました。紹介元の医師と手の外科医の診断が食い違ったのは 8%(204 件のうち 16 件)でした。
食い違いの理由で最も多かったのは、成長軟骨(骨端線)の読み違いで 6 件、次が複数の骨折の見落としで 3 件でした。子どもの指の骨の端には成長のための軟骨があり、X 線では骨折の線と紛らわしくなります。大人の骨にはこの軟骨がないため、同じ画像でも見え方が違います。スポーツは骨折の原因の 70 件(39%)を占め、年長の子の骨折の多さはスポーツへの参加と関係していると著者らは見ています。
この値は、専門病院に紹介された子だけを数えたものです。紹介されずに済んだ子や、受診しなかった子は入っていません。また、紹介元の医師の力量だけを測った研究でもありません。著者らは、成長軟骨の位置を覚え、複数の骨折を探すことが診断の精度を上げると述べています。
見た目と動きだけで判断しない、というのは、家庭で骨折を見分けられるという話ではありません。見分けるのは画像の仕事で、家庭にできるのは、その画像が必要そうかを判断して受診することです。指を動かせても、腫れが強く、押した痛みが骨の一点にあるなら、その時点で整形外科に相談する価値があります。痛む場所を子どもに指で示してもらうと、受診先でも同じ場所を伝えやすくなります。
冷やしてよい範囲と受診の目安
指を突いた直後の応急の対応は、冷やすことと、動かさずに休ませることまでです。氷を直接当てず、冷たいタオルや氷を入れた袋を当てて、指全体を冷やします。冷やしている間も、指先の色と感覚、自分で伸ばせるかを見ておきます。
冷やせば痛みが引くわけではありません。冷やすのは、腫れと痛みを和らげるための応急の対応で、骨や腱の状態を変えるものではありません。冷やしたあとの見た目が良くなっても、中の損傷の程度は変わりません。冷やしたあとに楽になったかどうかと、受診の判断は分けて考えます。
引っ張って指を伸ばす処置は勧めません。強く引くと、折れている骨がずれるおそれがあります。引っ張る処置の害を調べた研究は見つかりませんでしたが、ずれた骨折の扱いは画像を見てから決めるものです。
受診の目安は、指先の関節が自分で伸ばせない、指が曲がって見える、指が回っている、強い腫れや押した痛みが骨の一点にある、動かせない、しびれる、のいずれかです。これらが一つでもあれば、稽古を止めて、X 線を撮れる整形外科へ向かいます。迷った場合も、整形外科で診てもらうほうが確実です。
冷やして様子を見てよいのは、腫れが軽く、指先の色が良く、自分で曲げ伸ばしができる場合です。それでも、翌日の稽古前に腫れが増えていないか、押した痛みの範囲が広がっていないかを見ます。時間で区切らず、上の目安が現れた時点で受診に切り替えます。観察の記録は、指の名前と押した場所、腫れの大きさを一言で残すと、翌朝の比較がしやすくなります。
固定の方法でわかっていること
指の骨折と診断されたあとの固定については、比較試験があります。Weber(2019)は、関節の外の指の骨折と診断された子ども 99 人を、隣の指と一緒に留める方法と副子に無作為に分けました。骨折のずれが新たに起きたのは、隣の指の固定で 1 人、副子で 3 人でした。
ずれが起きたのは、いったん整復(ずれた骨を元の位置に戻す処置)した 31 件のずれた骨折だけで、いずれも小指でした。著者らは、関節の外の指の骨折では隣の指の固定が副子に劣らないと結論し、ずれた骨折は個別に判断が要るとしています。この試験の対象は、医師が画像で骨折を確かめた子です。受診して画像を撮ることが、固定の方法を選ぶ前提になります。
隣の指に留める方法にも、続けにくさと皮膚の問題があります。Won(2014)は、韓国の小児整形外科と手の外科の外科医 55 人に聞き取り、48 人(87%)がこの方法を使っている一方、65% の外科医が守られにくさを経験し、45% の外科医がテープの粘着部分の皮膚のけがを見たと答えました。いずれも、答えたのは外科医です。
槌指は、6 週間以上の固定と、言いつけを守ることが要ります。Handoll(2004)は槌指の治療を比べた無作為化試験 4 本(278 人、283 本の指)をまとめました。どの試験も方法に欠点があり、副子の種類による優劣は決められませんでした。このレビューは 2004 年のもので、新しい試験が加わっていない点も踏まえて読みます。
固定の方法は、けがの種類と画像の結果で変わります。家庭でテープを巻くかどうかを決める前に、まず画像で骨折の有無と位置を確かめる順になります。固定の期間と種類は、診察した医師が画像を見て決めます。
子どもと大人で違う点
子どもの指には、大人にはない成長軟骨があります。同じ強さで突いても、軟骨の部分が傷むと、X 線の線が骨折なのか成長の途中なのか迷いやすくなります。Chew(2012)で診断の食い違いの最多が成長軟骨の読み違いだったのは、この部分の難しさを示しています。同じ年齢でも、軟骨の閉じる時期には個人差があります。
大人の突き指では、槌指のように腱の損傷が目立つことがあります。Handoll(2004)の対象は主に大人で、子どもの槌指の頻度や経過は別に確かめる必要があります。子どもと大人で同じ名前のけがでも、確かめる順番は同じでも、見るべき点は少し違います。大人でも、突いた直後に指先が伸びないままなら、槌指を含めて画像で確かめる対象になります。
注意が要るのは、同じ指を繰り返し痛める子、腫れが引いても指の向きが戻らない子、指先の感覚が鈍いままの子です。これらは一度の突き指として片づけず、整形外科で見てもらうきっかけになります。骨や関節の病気を持っている子は、けがの強さが小さくても受診の線を早めに置きます。腫れが引いても、指を曲げたときの引っかかりが残る場合は、同じように整形外科で相談する目安になります。
指のけがは、突く瞬間だけでなく、相手を押さえようとして指が反り返るときにも起きます。どちらの場合も、保健室で見る項目は同じで、指先の色、感覚、自分で伸ばせるか、左右の向きの違いです。痛みが引いても形が変わったままなら、その時点で受診の対象になります。
保健室と家庭で確かめること
保健室で子どもを見るときは、座らせて両手を膝の上に置き、左右の指を並べます。腫れている指、曲がっている指、皮膚の色が違う指が、一目でわかります。そのうえで、指先の関節を一つずつ自分で伸ばしてもらい、伸びない関節があれば受診の目安に入れます。指の名前は、親指から小指まで一本ずつ添えて伝えると、診察のときに話が早くなります。
家庭では、稽古から帰ったあとと翌朝の二回、腫れと押した痛みを同じ場所で比べます。腫れが増えている、痛む場所が広がっている、指の向きが変わっている、のどれかがあれば整形外科へ向かいます。冷やしたあとに楽になっても、翌朝にもう一度同じ場所を押して確かめます。
道場では、けがをした子が「まだできる」と言っても、その場で組手に戻さない選択があります。指を突いた直後は痛みが強く出やすく、その時点で動かせたかどうかは、骨の状態を決める材料になりません。指導者には、どの指を、どの場面で突いたかを伝えておくと、その後の観察が具体的になります。組手を続けるかどうかは、その日の痛みだけで決めず、翌朝の腫れと向きを見てから決めます。
組手の前に、指を突いたらその場で左右の指の向きと伸ばしやすさを比べる、と子どもと決めておくと、保健室に来てからの観察が短くなります。痛みが消えても形や動きに違和感が残るなら、次の稽古を休んで整形外科で見てもらう順番です。家庭で見る項目を一つに絞るなら、指の向きを選んでおくと迷いません。
よくある質問
突き指をした指を引っ張ると良くなりますか
引っ張る処置は勧めません。折れている骨があれば、引く力でずれるおそれがあります。ずれの有無は画像で確かめるもので、引っ張って指が伸びたように見えても、骨の位置が戻ったとは限りません。指を突いたら、引っ張らずに冷やし、指先を自分で伸ばせるかと指の向きを見てください。迷う場合は、X 線を撮れる整形外科で診てもらうのが確実です。
冷やせば受診しなくてもよいですか
冷やすのは腫れと痛みを和らげる応急の対応で、骨折や腱の損傷の状態を変えるものではありません。冷やして楽になっても、指先の関節が伸びない、指が曲がって見える、強い腫れや一点の痛みがある、しびれる、のどれかがあれば受診してください。これらがなく、腫れが軽くて自分で曲げ伸ばしできる場合は、家で冷やしながら観察を続け、少しでも悪化すれば整形外科へ向かいます。
隣の指にテープで巻いてもよいですか
医師が画像で骨折を確かめた子どもの一部では、隣の指に留める方法が副子に劣らないという試験があります。ただしこれは診断済みの骨折を対象にした比較で、家で巻けば受診が要らないという結果ではありません。テープの粘着部分で皮膚がただれる例や、言われたとおりに守れない例も報告されています。巻くかどうかは診察のあとに決める範囲です。
腫れが引かないときは何日で受診しますか
腫れが引かないときは、日数を数えずに整形外科へ向かいます。腫れが増える、痛む場所が広がる、指の向きが変わる、指先の感覚が鈍い、のどれかがあれば、すぐに受診してください。受診先では、いつ突いたか、どの指か、腫れがいつからかを伝えると話が早くなります。家庭では腫れだけでなく指の向きや感覚の変化も確かめ、受診時に伝える情報として残しておきます。
この記事の限界
比べた 5 本の研究は、対象とした子どもの年齢も、けがの種類も、研究の設計もばらばらです。Vadivelu(2006)と Chew(2012)は手の外科や専門病院に来た子だけを数えており、家庭で済んだ軽い突き指は入っていません。空手の組手を直接の対象にした研究は見つかりませんでした。
この記事は医療の助言ではなく、家庭でできる応急の対応と、整形外科を受診するかどうかの判断までを扱います。家庭で指の形や感覚の変化を見つけたときは、そのまま稽古に戻す判断を避け、X 線を撮れる整形外科での確認が欠かせません。
参考文献
- Vadivelu R ほか. Hand injuries in children: a prospective study. J Pediatr Orthop. 2006;26(1):29-35.
- Chew EM ほか. Hand fractures in children: epidemiology and misdiagnosis in a tertiary referral hospital. J Hand Surg Am. 2012;37(8):1684-1688.
- Weber DM ほか. Buddy taping versus splint immobilization for paediatric finger fractures: a randomized controlled trial. J Hand Surg Eur Vol. 2019;44(6):640-647.
- Handoll HH ほか. Interventions for treating mallet finger injuries. Cochrane Database Syst Rev. 2004;(3):CD004574.
- Won SH ほか. Buddy taping: is it a safe method for treatment of finger and toe injuries? Clin Orthop Surg. 2014;6(1):26-31.
技の名前を調べた次は、組手の痛みと礼儀を稽古場で確かめる
- 向く人: 技の名前や由来を知ったうえで、型と組手で実際に体を動かしたい大人
- 向く人: けがの防ぎ方と礼儀の教え方を見てから、子どもに空手を習わせたい保護者
- 向かない人: 相手を倒す技だけを早く覚えたい人
- 向かない人: 医師から打撃や接触のある運動を止められている人
このサイトはワールド極真会空手連盟 東京支部が制作しています。稽古場はオンザショア立川店(立川駅から徒歩1分・溶岩プレートの床のスタジオ)です。
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よくある質問
突き指をした指を引っ張ると良くなりますか
引っ張る処置は勧めません。折れている骨があれば、引く力でずれるおそれがあります。ずれの有無は画像で確かめるもので、引っ張って指が伸びたように見えても、骨の位置が戻ったとは限りません。指を突いたら、引っ張らずに冷やし、指先を自分で伸ばせるかと指の向きを見てください。迷う場合は、X 線を撮れる整形外科で診てもらうのが確実です。
冷やせば受診しなくてもよいですか
冷やすのは腫れと痛みを和らげる応急の対応で、骨折や腱の損傷の状態を変えるものではありません。冷やして楽になっても、指先の関節が伸びない、指が曲がって見える、強い腫れや一点の痛みがある、しびれる、のどれかがあれば受診してください。これらがなく、腫れが軽くて自分で曲げ伸ばしできる場合は、家で冷やしながら観察を続け、少しでも悪化すれば整形外科へ向かいます。
隣の指にテープで巻いてもよいですか
医師が画像で骨折を確かめた子どもの一部では、隣の指に留める方法が副子に劣らないという試験があります。ただしこれは診断済みの骨折を対象にした比較で、家で巻けば受診が要らないという結果ではありません。テープの粘着部分で皮膚がただれる例や、言われたとおりに守れない例も報告されています。巻くかどうかは診察のあとに決める範囲です。
腫れが引かないときは何日で受診しますか
腫れが引かないときは、日数を数えずに整形外科へ向かいます。腫れが増える、痛む場所が広がる、指の向きが変わる、指先の感覚が鈍い、のどれかがあれば、すぐに受診してください。受診先では、いつ突いたか、どの指か、腫れがいつからかを伝えると話が早くなります。家庭では腫れだけでなく指の向きや感覚の変化も確かめ、受診時に伝える情報として残しておきます。