- Ford(2010)は、米国の若い選手 315 人を対象に、約 1 年あけて着地を測りました。
- DiStefano(2009)は、少年サッカーの 27 チームに所属する 173 人を、くじ引きで異なる運動の組に分けました。
- Padua(2015)は、11〜18 歳のサッカー選手 829 人の着地を採点し、その後のシーズン中に起きた前十字靱帯損傷を追いました。
- 膝の角度、動作の採点、実際に起きたけがは、それぞれ違う結果です。
跳び蹴りの着地で子どもの膝は痛むか|跳ぶ技と着地のけがの研究
「動きの誤りが多かった選手ほど、改善も大きかった」と、DiStefano(2009)は少年サッカーの着地練習について報告しています。跳ぶ技を習う子どもの膝や足首が心配な保護者にとって、動きを練習で変えられる可能性は気になるところです。着地の動きが改善した研究はありますが、それだけで膝のけがを防げる、あるいは跳ぶ技で膝を痛めるとは判断できません。取り上げる根拠は空手の跳ぶ技の着地を直接測ったものではなく、サッカーの跳び下り着地や、ハンドボールの切り返しなどを調べた研究です。
体育館の壁際から稽古を見ていて、跳んだ後の膝の向きが気になる場面を考えてみます。保護者が指導者に伝えるなら、「あの子は危ない」という評価より、どの動きの後に、どちらの脚が気になったかという観察から話を始めたいところです。研究で着地を採点する目的にも、練習前後の変化を見ることと、後にけがをする人を見分けることがあります。同じ着地を見ていても、この目的の違いで結果の意味は変わります。
成長で着地は変わる
Ford(2010)は、米国の若い選手 315 人を対象に、約 1 年あけて着地を測りました。同じ人を時間をおいて調べる縦断研究で、異なる年齢の子をその場で並べるだけの比較とは違います。測ったのは、台から跳び下りて着地する課題での膝の動きです。サッカーなどの選手が参加し、成長の段階や男女によって変化の仕方が異なるかを調べています。
この研究では、成長が急な時期の女子で、着地の際に膝が内側へ入る角度が増え、男子では同じ増加が見られませんでした。著者らは、思春期の早い段階を、前十字靱帯のけがに関係する特徴の男女差が広がるうえで重要な時期と捉えています。前十字靱帯は膝の中で関節の安定を支える組織で、研究ではその損傷に関わる動きが注目されています。
ただし、この研究の観察対象は着地の形であり、実際に起きたけがの件数ではありません。膝の角度が変化したという結果と、痛みが出たという結果は別の項目です。女子の成長に伴う変化を記述した研究として読むと、性別で参加を制限する話ではなく、同じ子の動きを成長の経過の中で見直す話になります。
保護者と指導者が話す際には、以前できていた動きと最近の動きを比べる、という見方が考えられます。例えば着地の位置や膝の向きが気になったとき、今の練習課題を指導者に見てもらうことです。これは研究で検証された空手の指導法ではなく、同じ選手を追った研究を、稽古の観察に生かすための提案です。本人が痛みを訴えているかどうかは、見た目の変化とは別に尋ねます。
練習で変わった動きと、変わらなかった動き
DiStefano(2009)は、少年サッカーの 27 チームに所属する 173 人を、くじ引きで異なる運動の組に分けました。このように割り付けて比べる方法を無作為化比較試験といいます。片方は全員が同じ内容を行い、もう片方はそれぞれの着地の誤りに合わせた内容を行いました。練習前後の変化は、着地の動作を項目ごとに評価する採点法で調べています。
結果は、最初に動きの誤りが多かった子ほど改善が大きく、高校生は小中学生年代より改善が大きいというものでした。一方、運動内容を個別に分けた組と共通の内容を行った組との間、また男女の間には差が見られませんでした。全員が訓練を受けており、練習しない組との比較は含まれていません。ここで得られたのは、異なる運動内容や年齢による着地の採点の変化です。
これと並べて読みたいのが、Nedergaard(2026)の女子ハンドボール選手の試験です。デンマークの 11〜13 歳の選手 35 人を、膝のけがに関係する動きを対象にした運動の組と、肩のけがを防ぐための運動の組に分けました。監督のもとで週 2 回、15 分の運動を 8 週続けても、膝の角度や負荷、筋の働きに意味のある改善は見られませんでした。測定した課題は横への切り返しで、跳び下り着地そのものではありません。
年齢が低い集団では、短い訓練で測定上の変化が出にくい可能性があります。ただ、サッカーとハンドボールでは運動内容も測定課題も異なり、年齢だけを入れ替えた比較ではありません。共通するのは、どちらも動きを測り、練習によって起きたけがの減少を結果として示した試験ではない点です。稽古を振り返る際も、「動きに変化があった」という報告には、その変化を何で見たのかという説明が必要です。
着地の採点と、その後のけがを比べる
Padua(2015)は、11〜18 歳のサッカー選手 829 人の着地を採点し、その後のシーズン中に起きた前十字靱帯損傷を追いました。使ったのは、着地で見られる動作の誤りを数える LESS と呼ばれる採点法です。けがをした 7 人では採点が高く、著者らは、けがの危険を調べる入口となる検査として可能性があると述べました。動きを評価してからけがを追う前向き研究なので、着地と将来の損傷の関係を検討した結果です。
研究では採点の切り分け方も調べていますが、けがをした人は少数で、切り分ける点も同じ集団のデータから選ばれています。その集団に合う境目を探すことと、別の集団でも同じように働くかを確かめることは、研究の別の段階です。採点の値を使う場面では、どの競技の、どの年齢の人で調べられた評価なのかが重要になります。
Krosshaug(2016)は、ノルウェーの一流の女子サッカー・ハンドボール選手 710 人を調べました。平均年齢は 21 歳で、跳び下り着地を立体的に測り、その後の前十字靱帯損傷を追っています。新たな非接触の損傷は 42 件あり、その中には以前にも同じ靱帯を損傷していた選手が含まれました。非接触とは、けがの場面で相手と直接ぶつかっていないことを指します。
過去に前十字靱帯のけががなかった選手に絞ると、膝が内側に動く量など、調べた指標はいずれもその後のけがの増加と結びつきませんでした。この研究の結論は、その着地テストを将来の損傷の予測に使うことに否定的です。Padua(2015)の若いサッカー選手と、Krosshaug(2016)の成人女子の一流選手では、集団と測定法が異なります。可能性を示した結果と、予測の道具として弱かった結果を合わせると、採点だけで子どもを「危ない子」と決める扱いは避けるべきです。
研究が測ったものを並べて読む
膝の角度、動作の採点、実際に起きたけがは、それぞれ違う結果です。角度は特定の動きを数値にし、採点は複数の観察項目をまとめ、けがの追跡はその後の損傷を記録します。「着地の研究」とひとまとめにする前に、何を調べた研究かを並べると、改善という言葉が指す内容を具体的に読めます。
| 研究(著者 年) | 競技 | 年齢と人数 | 測ったこと(着地の角度・採点・けが) | 期間 | 結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| Ford(2010) | サッカーなど | 思春期前後の若い選手 315 人 | 跳び下り着地の膝の動き | 約 1 年あけて測定 | 成長が急な時期の女子で膝が内に入る角度が増加 |
| DiStefano(2009) | サッカー | 小中学生年代と高校生、173 人 | 着地の採点 | 訓練の前後 | 誤りが多い子、高校生で改善が大きい |
| Nedergaard(2026) | ハンドボール | 11〜13 歳の女子 35 人 | 横への切り返しでの膝の角度・負荷・筋の働き | 8 週の介入 | 測定した指標に意味のある改善なし |
| Padua(2015) | サッカー | 11〜18 歳、829 人 | 着地の採点と前十字靱帯損傷 | シーズン中の追跡 | 損傷した 7 人の採点が高かった |
| Krosshaug(2016) | サッカー・ハンドボール | 平均 21 歳の女子 710 人 | 跳び下り着地の測定と前十字靱帯損傷 | 測定後に追跡 | 過去に損傷がない選手では測定値と損傷の増加が結びつかなかった |