- Asada(2026)は、日本の小学 4 年生から 6 年生までの 3399 人を追い、習い事の頻度と 2 年後の自信との関係を調べました。
- Mahoney(2012)は、開始時に 12〜18 歳だった 1115 人について、組織された活動に費やす時間と、若い成人になった時期の状態を追いました。
- Fredricks(2012)は、米国の高校生 13,130 人を追い、課外活動の数と時間が学業にどう関連するかを調べました。
- Melman(2007)の十代を対象とした調査では、活動時間が長い生徒ほど、自分で報告した不安も高い傾向がありました。
習い事の掛け持ちと稽古で疲れる子ども|活動の多さと心の健康の研究
活動への参加は後の自信と結びつき、その関連は中程度の頻度で最も強かったとする Asada(2026)の報告は、疲れている子の習い事を減らすか考える入口になります。夕方、次の予定へ向かう支度をしながら、子どもが疲れたと口にすることもあります。空手もほかの習い事も好きなら、予定を減らすべきか、好きなことを続ける時間を守るべきか、保護者は迷うかもしれません。回数だけで減らすと決めず、本人が続けたい理由と、自由な時間・睡眠が残っているかを確かめることが出発点です。
ここで扱うのは空手の掛け持ちを直接調べた研究ではなく課外活動全般の調査で、燃え尽きという消耗した状態を直接測ったものも含まれていません。扱われたのは、自信、不安、生活への満足、学校への気持ちなどです。活動が多いほど良い結果と結びつく報告もあれば、増えるにつれて頭打ちになったり、不安の高さと結びついたりする報告もあります。予定表の埋まり具合と、本人がその生活をどう感じているかを、研究ごとの違いを追いながら考えます。
習い事の掛け持ちは子どもの心の負担になるのか
Asada(2026)は、日本の小学 4 年生から 6 年生までの 3399 人を追い、習い事の頻度と 2 年後の自信との関係を調べました。数えたのは塾を除いた活動への参加回数です。自信は、自分自身をどう評価するかについての 4 段階の回答で捉えています。日本の小学生の生活に近い対象を、同じ時点の比較だけで終えず、後の学年まで追った点が特徴です。
Asada(2026)では、週 2〜5 回の参加に後の自信との関連があり、週 6 回以上では統計的に明らかな関連は認められませんでした。統計的に明らかとは、データのばらつきを考慮しても関連があると判断されたことです。頻度を高めた群ほど一貫して自信も高くなる形にはなっていません。回数を増やすほど良いという期待に対して、途中で関連が強まり、その後は強まらないという結果を示しています。
また、Asada(2026)が男女を別々に解析した際、関連が統計的に明らかだったのは男子でした。全体の結果と男女別の結果を並べると、同じ活動頻度でも結びつきの表れ方に違いがあることがわかります。測った中心は参加回数と自信であり、稽古の後の身体的な疲れや、その日の気分を詳しく追った調査とは目的が異なります。
この研究の活動回数には、活動の中身や滞在時間の違いが織り込まれていません。同じ頻度でも、短い活動が続く予定と長い活動が続く予定では、家庭の予定表の姿は変わることもあります。自信との関連を見るための回数という尺度を、子どもの生活を眺める項目の一つとして受け止めると、後に紹介する時間や動機の調査とのつながりが見えてきます。
長時間の活動と後の不調は結びつくとは限らない
Mahoney(2012)は、開始時に 12〜18 歳だった 1115 人について、組織された活動に費やす時間と、若い成人になった時期の状態を追いました。活動の多さを測る軸は、教室の数や週の参加回数ではなく時間です。学校時代の活動が、その場の気分だけでなく後の生活とどう結びつくかを見ています。対象の年代と、結果を確かめた時期の両方に幅のある追跡です。
Mahoney(2012)では、活動時間が多いほど、心の状態の良さ、社会への参加、学歴などの望ましい結果と関連しました。一方、心理的な苦痛、物質使用、反社会的な行動といった問題の指標とは関連していませんでした。活動が長時間に及ぶこと自体を、一律に後の不調の原因とする見方を支える結果は乏しかったのです。活動の多さの害を考える際には、こうした問題との関連が出なかった報告も含めて捉えます。
この調査では、子どもたちが自分で活動を選んで参加しています。活動に長く参加する人と短く参加する人では、もともとの意欲や参加しやすい環境も異なる可能性があります。研究の結果は、活動時間に沿って後の姿を見たものであり、全員の時間を同じ方法で増減させた比較とは成り立ちが異なります。この選ばれ方は、良い関連を考えるうえで重要な条件です。
Asada(2026)が後の自信を捉えたのに対し、Mahoney(2012)は若い成人期の幅広い適応を調べています。活動に参加して得られる経験を、保護者が前向きに捉える余地はあります。ただ、目の前の子が疲れを訴えているなら、その言葉は別に聞き取る対象です。先の時期の平均的な結果を見ながらも、今の生活について本人が語る内容を判断の材料に残します。
増やした先に頭打ちや低下が見られた研究
Fredricks(2012)は、米国の高校生 13,130 人を追い、課外活動の数と時間が学業にどう関連するかを調べました。第 10 学年の生徒は 2〜3 種類の活動に参加し、活動時間は平均で週 5 時間でした。活動の数や時間は学業の良い結果と結びつきましたが、参加の幅や時間が高い水準になると、学業への適応は低下する形を示しました。良い方向の関連が際限なく続くという結果ではなく、増え方に沿って向きが変わる結果です。
Knifsend(2012)は、高校生 864 人の活動を「分野の数」で捉えました。活動が 2 分野にわたる生徒は、それより少ない生徒や多い生徒に比べて、学校に居場所があると感じる帰属感や成績、学業への取り組みが良好でした。この研究で数えたのは、参加の幅です。通っている教室の名前を数えることと、活動を分野ごとに分類することでは、同じ予定の数え方も変わります。
Ren(2020)は、中国の未就学児 695 人について、認知、言語、社会情緒の発達と課外活動を調べています。認知は考えたり理解したりする力、社会情緒は感情や人との関わりに関する発達です。活動への参加は認知と言語の発達と正の関連がありましたが、社会情緒の発達には同じ正の関連が見られませんでした。発達のどの面を見るかによって、活動との結びつきが異なっています。
さらに Ren(2020)では、活動を続けてきた期間によっても、活動の数や時間との関係が変わりました。継続期間が平均的な水準では関連が中立となり、とても長い場合には悪い方向に向かいました。ここでは現在の週の忙しさに加え、活動を続けてきた長さも調べています。高校生の学業、学校への帰属感、幼児の発達というそれぞれの結果に、量を足すだけでは良い方向に進み続けないという共通点が見られます。
不安、親の期待、自分で決める時間にも目を向ける
Melman(2007)の十代を対象とした調査では、活動時間が長い生徒ほど、自分で報告した不安も高い傾向がありました。その時点の活動時間でも、年間を通じた活動時間でも同様の傾向でした。一方、気分が落ち込む抑うつや身体の症状の訴えでは、同じ結果は出ていません。悪い方向の結果があったのは不安であり、調べた心身の指標すべてに広がっていたわけではありません。
Melman(2007)は、一時点で活動と症状を本人に尋ねた調査です。時間が長いから不安が高まるという向きに加え、不安の高い子が多くの活動を選ぶという向きも考えられます。この結果を読むときは、本人が活動時間をどう受け止めているかという問いが残ります。長い時間を充実と感じているのか、追われる感覚を持っているのかによって、家庭で聞き取る話も変わります。
Randall(2015)は、裕福な地域の高校 1 年相当の生徒 122 人について、活動に参加する理由に注目しました。親のために活動しているという動機は、親からの圧力を強く感じることや、生活満足度の低さと結びついていました。ここで比べられたのは、時間の多さだけでは捉えにくい本人の理由です。対象は少人数の特定の地域で、活動を選べる家庭環境という背景も伴っています。
Ivanov(2026)は、ロシアの 5〜8 年生 2944 人の調査で、塾や組織された活動の時間と、自分で過ごし方を決める時間を調べました。前者は良い成績と関連しましたが、心の健康全体とは関連していませんでした。対して、自分で決める時間は、心の健康の良さと成績の両方に結びついていました。予定のある時間を数えるだけでなく、その外側に本人の選べる時間が残るかという視点を加える結果です。
回数・時間・分野を混ぜずに結果を並べる
研究を並べるときは、まず対象の年代と、何を多さとして数えたかを見ます。回数が同じでも時間が違い、活動の数が同じでも分野の広がりが違う場合があります。また、自信が高いこと、不安が少ないこと、成績が良いことは、それぞれ別の評価項目です。下の表には、良い方向の結果とともに、頭打ち、低下、関連がなかった項目も載せています。
| 研究 | 対象の年代 | 多さの測り方 | 結果の向き |
|---|---|---|---|
| Asada(2026) | 日本の小学 4〜6 年生 | 塾を除く習い事の週あたり回数 | 週 2〜5 回で後の自信と関連。週 6 回以上は明らかな関連なし。男女別では男子で有意 |
| Mahoney(2012) | 開始時 12〜18 歳、若い成人期まで追跡 | 組織された活動への参加時間 | 後の良い適応と関連し、心理的苦痛などの問題とは関連なし |
| Fredricks(2012) | 米国の高校生 | 課外活動の数と時間 | 学業と正の関連がある一方、高い水準では適応が低下 |
| Knifsend(2012) | 高校生 | 参加する活動分野の数 | 2 分野で学校への帰属感や学業が良好。より少ない・多い群では低い |
| Ren(2020) | 中国の未就学児 | 活動の数・時間・継続期間 | 認知と言語に正の関連、社会情緒に同じ関連なし。継続期間がとても長い場合は悪い方向 |
| Melman(2007) | 十代 | その時点と年間の活動時間 | 時間が長いほど不安が高い傾向。抑うつや身体の訴えでは同様の結果なし |
| Randall(2015) | 裕福な地域の高校 1 年相当 | 参加時間に加えて参加理由 | 親のためという動機は、圧力の実感と生活満足度の低さに関連 |
| Ivanov(2026) | ロシアの 5〜8 年生 | 塾・活動の時間と自分で決める時間 | 組織された時間は成績に関連し心の健康全体とは関連なし。自由な時間は両方に正の関連 |
減らすかどうかを本人の理由と生活から考える
掛け持ちして疲れている子については、本人の続けたい理由と、自由な時間や睡眠の余地を、予定の見直しに結びつけます。数だけでは決まりません。好きな活動を続けたい気持ちと、今の予定を負担に感じる気持ちが同時に出てくることもあります。保護者が先に回数の上限を置くより、どの活動の何を大切にしているのかを本人の言葉で確かめる順序が考えられます。
Randall(2015)が着目した参加理由を家庭の会話に生かすなら、楽しさ、身につけたいこと、親に喜んでほしい気持ちなどを、本人が話した範囲で受け止めます。保護者が望む理由を先に選択肢として押しつけず、本人から出た言葉を残します。稽古でできるようになりたいことがある場合も、ほかの活動への気持ちが強い場合も、予定を相談するときの材料になります。親の考えと本人の希望が一致する部分も、違う部分も見える形にします。
Ivanov(2026)の結果から家庭で目を向けたいのは、活動が終わった後に、自分で過ごし方を決められる時間があるかという点です。予定表の空欄を次の習い事で埋める前に、その時間を本人がどう過ごしたいかを聞けます。加えて、就寝と起床の様子を見て、予定によって睡眠の時間が押されていないかを確かめます。これは新たな活動を増やす話ではなく、すでにある生活の時間を眺める作業です。
疲れや不安など心身の不調が続く場合は、小児科や学校の相談先に、活動の予定と本人の様子を伝えて判断を相談します。家庭だけで掛け持ちのせいだと決めず、続けたい理由、自由な時間、睡眠の状況を併せて伝えます。活動を減らすことも含め、本人と相談先の見方を踏まえて予定を見直します。
よくある質問
週に何回までなら多すぎないのか
共通の上限として示せる回数は、これらの研究からは決まりません。Asada(2026)は塾を除いた参加回数を数え、ほかの研究は活動時間や分野の数、継続期間を調べているためです。家庭では回数だけを比べるより、本人が続けたいと思う理由と、自由な時間や睡眠が残っているかを併せて確かめます。疲れが続いている場合には、その様子も相談先に伝える材料になります。
活動が多いと心の健康は悪くなるのか
Mahoney(2012)では活動時間と後の問題との関連はなく、Melman(2007)では時間の長さと不安の高さが関連していました。前者は若い成人期まで追い、後者は十代の本人にその時点で尋ねています。心の健康と呼ぶ項目や測る時期によって結果が違うので、不安、自信、満足度を一まとめにせず、子どもが今何を負担に感じているかに耳を傾けます。
親に喜んでほしくて通う気持ちも聞いたほうがよいのか
参加する理由の一つとして、本人がどう感じているかを聞くことは、予定を相談する材料になります。Randall(2015)では、親のためという動機が、圧力の実感や低い生活満足度に結びついていました。本人が楽しいと感じている部分も含めて聞き、保護者の期待だけで続けたい理由を説明しないようにします。活動への希望と生活の余裕を一緒に眺める会話につなげます。
この記事の限界
適用範囲は日本の小学生、中国の未就学児、海外の十代まで広く、学校の課外活動と家庭が選ぶ習い事では、参加する環境や活動を選べる条件も異なります。追跡調査と一時点の調査が混在し、裕福な地域に限った研究もあるため、活動への参加を選ぶ背景が結果に関わっています。
活動の数え方は参加回数、時間、分野、継続期間にわかれ、結果の測定も自信、不安、満足度、学業などに及び、疲れた子の予定を減らした後の変化は直接検証されていません。本人の動機と自由な時間、睡眠を同時に追った調整の研究が乏しいため、予定を減らした後の負担の変化までは、この調査群から見通せません。
参考文献
- Asada T. Frequency of Organised Enrichment Activities and Later Self-Esteem in Japanese Children: A Longitudinal Cohort Study. Child Care Health Dev. 2026;52(5):e70336.
- Mahoney JL. The Over-Scheduling Hypothesis Revisited: Intensity of Organized Activity Participation During Adolescence and Young Adult Outcomes. J Res Adolesc. 2012;22(3):409-418.
- Fredricks JA. Extracurricular Participation and Academic Outcomes: Testing the Over-Scheduling Hypothesis. J Youth Adolesc. 2012;41(3):295-306.
- Knifsend CA. Too Much of a Good Thing? How Breadth of Extracurricular Participation Relates to School-Related Affect and Academic Outcomes During Adolescence. J Youth Adolesc. 2012;41(3):379-389.
- Ren L. The linear and nonlinear effects of organized extracurricular activities on Chinese Preschoolers’ development. Contemp Educ Psychol. 2020;60:101845.
- Melman S. Adolescent Overscheduling: The Relationship Between Levels of Participation in Scheduled Activities and Self-Reported Clinical Symptomology. High Sch J. 2007;90(3):18-30.
- Randall ET. Reasons for the “after-school pressure cooker” in Affluent Communities: It’s Not How Much Time, but Why. J Child Fam Stud. 2015;25(5):1559-1569.
- Ivanov I. Losing time for oneself? Tutoring, organised activities, and self-directed leisure as predictors of psychological well-being and academic achievement in Russian adolescents. World Leis J. 2026:1-21.
技の名前を調べた次は、組手の痛みと礼儀を稽古場で確かめる
- 向く人: 技の名前や由来を知ったうえで、型と組手で実際に体を動かしたい大人
- 向く人: けがの防ぎ方と礼儀の教え方を見てから、子どもに空手を習わせたい保護者
- 向かない人: 相手を倒す技だけを早く覚えたい人
- 向かない人: 医師から打撃や接触のある運動を止められている人
このサイトはワールド極真会空手連盟 東京支部が制作しています。稽古場はオンザショア立川店(立川駅から徒歩1分・溶岩プレートの床のスタジオ)です。
よくある質問
週に何回までなら多すぎないのか
共通の上限として示せる回数は、これらの研究からは決まりません。Asada(2026)は塾を除いた参加回数を数え、ほかの研究は活動時間や分野の数、継続期間を調べているためです。家庭では回数だけを比べるより、本人が続けたいと思う理由と、自由な時間や睡眠が残っているかを併せて確かめます。疲れが続いている場合には、その様子も相談先に伝える材料になります。
活動が多いと心の健康は悪くなるのか
Mahoney(2012)では活動時間と後の問題との関連はなく、Melman(2007)では時間の長さと不安の高さが関連していました。前者は若い成人期まで追い、後者は十代の本人にその時点で尋ねています。心の健康と呼ぶ項目や測る時期によって結果が違うので、不安、自信、満足度を一まとめにせず、子どもが今何を負担に感じているかに耳を傾けます。
親に喜んでほしくて通う気持ちも聞いたほうがよいのか
参加する理由の一つとして、本人がどう感じているかを聞くことは、予定を相談する材料になります。Randall(2015)では、親のためという動機が、圧力の実感や低い生活満足度に結びついていました。本人が楽しいと感じている部分も含めて聞き、保護者の期待だけで続けたい理由を説明しないようにします。活動への希望と生活の余裕を一緒に眺める会話につなげます。