- Frank(2023)は、健康な 6〜18 歳の子どもと青少年の運動課題を扱った 19 研究から、110 個の効果の推定値を検討しました。
- Hardy(1999)は、経験のある空手の実践者 25 人が新しい型を覚える実験を行いました。
- Abdelkefi(2026)は、同じ幼稚園の 5 歳児 46 人を無作為に分けて比べました。
- Toth(2020)は、心の中で行う練習について、1995〜2018 年に発表された 37 研究を検討しました。
頭の中で型をなぞる子ども|イメージ練習と動きの覚え方の研究
居間で座ったまま、稽古で習った型の出だしを頭の中でたどる子どもを思い浮かべてみます。腕も足も動かしていないこの時間が、動きを覚える助けになるのかは、保護者にとって気になるところです。イメージ練習は運動の学習を助ける可能性があり、子どもには実際の稽古へ短く足す使い方から考えられます。ただし、子どもの型そのものを調べた研究はなく、空手では成人の経験者や十代の少人数、ほかは一般の運動課題を調べた結果が中心です。
ここでいうイメージ練習は、体を動かす代わりに、動作を頭の中で思い描く練習です。自分の目を通して周囲を見るように描く方法も、自分が動く姿を外から眺めるように描く方法も研究されています。動作を思い出すことと、実際にその動作を行うことを組み合わせた試験もあります。
研究を読む際には、何を覚えたかに加え、いつ成績を測ったかに目を向けます。その場でできるようになった成績と、時間を置いて覚えているかを調べた成績では、結果の向きが違う例があるからです。型をなぞる時間の価値も、頭の中で流れがつながった感覚だけでなく、その後の稽古と結びつけて考えます。
子どものイメージトレーニングは動きの覚えに効くか
Frank(2023)は、健康な 6〜18 歳の子どもと青少年の運動課題を扱った 19 研究から、110 個の効果の推定値を検討しました。全体の効果量は 0.494 で、中くらいの改善を示す結果でした。効果量は、異なる検査で測った成績の差を共通の尺度にした値で、著者はイメージ練習が運動の成績を改善しうると結論しています。
この研究が見たのは、広い年齢にまたがる運動課題です。たとえば型の順序を覚えることに関心がある読者にとっては、動作を頭の中で扱う練習に改善の方向の結果がある点が関わってきます。一方、年齢、課題、発達の違いによって効果がどう変わるかは、著者が今後の研究課題に挙げています。
Behrendt(2021)は、9〜18 歳の計 934 人を含む 22 研究を検討しました。各研究の人数は 18〜136 人で、健康な子どものほか、発達に困難のある子どもも含まれていました。実際に体を動かす練習とイメージを組み合わせる形に見込みがある、というのが著者の結論です。
ただし、Behrendt(2021)が結果を数値として統合できたのは 2 研究でした。元の研究には結果を偏らせる恐れがあり、証拠の確かさは低いと評価されています。参加者をどう選び、どの練習と比べたかも含めて、改善を示す結果の確かさを点検した報告です。
このように、改善の方向と、その見積もりの確かさは一緒に扱うことになります。Frank(2023)の結果は運動の学びを助ける可能性を示し、Behrendt(2021)は実際の練習との組み合わせを支持しつつ、研究方法の弱さを示しました。家庭での使い方を考えるときも、頭の中での練習を稽古に追加するという条件が出発点になります。
空手では新しい型と突きの正確さを調べている
Hardy(1999)は、経験のある空手の実践者 25 人が新しい型を覚える実験を行いました。比べたのは、自分の姿を外から見るように描くイメージ、自分の目から見るイメージ、ストレッチです。成績は外から見るイメージが最もよく、次に自分の目から見るイメージ、ストレッチの順で、群の間に統計的に明らかな差がありました。
ここで比べたイメージの違いは、頭の中の視点です。自分を外から眺めるなら全身の姿を描くことになり、自分の目から見るなら動作中の自分が見ている場面を描くことになります。実験はこの視点を変え、新しく覚える型の成績を比較しました。
Hardy(1999)の対象は、すでに空手を経験している人です。新しい型を覚える課題でも、参加者にはそれまでに動作を学んだ経験がありました。初めて空手を習う子どもに視点を選ばせる場面とは、学習の出発点が異なります。
Boz(2026)が調べたのは、型全体ではなく、狙った場所への突きの正確さです。15〜17 歳の選手 31 人を、通常の稽古にイメージ練習を加えた 16 人と、稽古だけを行う 15 人に分け、8 週間のプログラムを比べました。イメージを追加した群では突きの正確さが高まり、著者は組手の稽古と並行する練習に改善の効果を認めています。
その一方で、Boz(2026)では、後日行った保持の検査で技術の成績と肩の関節の感覚が、練習直後より下がりました。保持の検査は、学んだものが時間を置いても残っているかを見る検査です。さらに、群分けは無作為ではなく、参加者を偶然に任せて割り振る方法を取っていないため、もともとの群の違いも検討すべき点として残ります。
型の実験は描く視点を、突きの実験は稽古への追加と後日の成績を扱っています。どちらも、単に頭の中で動きを描いたかどうかだけを問うより、何を描き、何と組み合わせ、いつ測ったかまで読むと内容がはっきりします。空手で得られた結果にも、こうした課題ごとの輪郭があります。
幼児と小学生では、課題も検査の時期も違う
Abdelkefi(2026)は、同じ幼稚園の 5 歳児 46 人を無作為に分けて比べました。イメージ練習は 16 人、身体活動は 15 人、対照群は 15 人で、手先の器用さ、ボールを扱う技能、バランスを測っています。イメージ練習の群は、対照群だけでなく身体活動の群よりもよい結果を示しました。
この試験の特徴は、幼児にとっての運動技能を複数の面から評価したことです。手先の操作、ボールの扱い、姿勢の安定という異なる課題で、イメージ練習を行った群の成績が高くなりました。著者は幼児教育の場での運動技能の発達に向けて、有望な方法だと述べています。
Moradi(2026)は、バスケットボールを始めたばかりの小学生男子 72 人を、6 群に無作為に割り振りました。練習は週 3 回、合計 8 回で、15 分のイメージ練習、または対照として算数の練習を行った後に、バスケットボールの動作を 20 回練習する構成でした。体を動かす部分は、イメージを行った後にも組み込まれています。
Moradi(2026)では、練習中に技能を身につける獲得の段階では、群の間に統計的に明らかな差がありませんでした。しかし、1 週間後に行った保持の検査では、外から自分を見るイメージは状況に応じる技能で、自分の目から見るイメージは条件が安定した技能で有利でした。練習の直後だけを見た場合と、時間を置いた場合とで、評価が変わった例です。
幼児の試験は複数の基本的な運動技能、小学生の試験は球技の技能とその保持を調べています。年齢と一緒に課題や練習の組み方も変わっているため、結果の違いを年齢だけで説明することはできません。Frank(2023)も年齢や発達による違いの解明を今後の課題としており、始める年齢を一律に決める根拠はまだ不足しています。
実際の練習と比べると、結果は一方向にそろわない
Toth(2020)は、心の中で行う練習について、1995〜2018 年に発表された 37 研究を検討しました。研究が発表される際の偏りも調べたうえで、全体として小さいながら正の効果を認めています。著者の結論は、運動などの成績に対する好ましい影響が持続して認められる、というものでした。
小さい効果という評価も、イメージ練習を考えるうえで大切な結果です。目立つ改善を示した個別の実験と、さまざまな課題を含めた全体の傾向では、印象が違うことがあります。Toth(2020)は子どもや空手に対象を絞っておらず、広い範囲の結果を検討したときの評価を示しています。
Kraeutner(2020)は、ダーツ投げを 5 日間、イメージで練習する条件と実際に投げて練習する条件で比べました。イメージだけでの成績の伸びはわずかで、実際に練習した場合に劣りました。著者は、練習方法の違いが成績と脳の活動の違いとして表れると結論しています。
この結果は、Abdelkefi(2026)の幼児でイメージ練習が身体活動の群を上回った結果と、同じ向きにはそろいません。前者はダーツの課題をイメージか実行かで練習する比較で、後者は幼稚園での運動技能を測る比較です。学習者も課題も異なる実験で、実際の運動とイメージのどちらがよかったかがわかれています。
さらに、Boz(2026)や Moradi(2026)が調べたのは、イメージと実際の練習を組み合わせる条件でした。実行を含む条件で得られた改善は、実行を取り除いた条件の成績とは別に検討されます。家庭で稽古を減らす理由に使うより、いつもの稽古に加える用途が、これらの試験の組み方に近づきます。
比較した相手と結果を一覧で見る
同じイメージ練習という名前でも、比較相手はストレッチ、算数、通常の稽古、実際の運動などさまざまです。下の表は、その違いと結果の向きを研究ごとにまとめています。学んだ直後だけでなく、後日の成績が扱われた研究では、その変化も載せています。
| 研究 | 対象 | 比べた相手 | 結果の向き |
|---|---|---|---|
| Frank(2023) | 健康な 6〜18 歳の運動課題、19 研究 | 各研究の対照条件 | 全体で中くらいの正の効果、効果量 0.494 |
| Behrendt(2021) | 9〜18 歳、22 研究、計 934 人 | 各研究の対照条件 | 実際の練習との併用に見込み、証拠の確かさは低い |
| Hardy(1999) | 空手経験者 25 人、新しい型 | 外から見るイメージ、自分の目から見るイメージ、ストレッチ | 外から見る、自分の目から見る、ストレッチの順によい |
| Boz(2026) | 15〜17 歳の空手選手 31 人 | 稽古にイメージを足す群と稽古のみの群 | 追加群の突きが正確に、保持検査では直後より成績が低下 |
| Abdelkefi(2026) | 同じ園の 5 歳児 46 人 | 身体活動の群と対照群 | イメージ群で手先・ボール技能・バランスがよい |
| Moradi(2026) | バスケットボール初心者の小学生男子 72 人 | イメージの視点別の条件と算数を行う対照条件 | 獲得時は有意差なし、保持時は技能によって有利な視点が異なる |
| Toth(2020) | 子どもに限定しない 37 研究 | 各研究の対照条件 | 小さいが正の効果 |
| Kraeutner(2020) | ダーツ投げの学習者 | イメージだけの練習と実際の練習 | イメージだけの伸びはわずかで、実際の練習に劣る |
稽古に足す短い時間として使う
家庭で試すなら、稽古で習った動作のうち、本人が思い出してみたい短い部分を選ぶところから始められます。始まりの姿勢から次の動作へ移る場面など、何を頭に描くのかを指導者と確かめます。新しい型を家庭だけで教え込む課題に広げず、すでに稽古で扱った動きを思い出す時間として置きます。
描き方についても、外から自分を見るほうが本人には思い浮かべやすいことも、自分の目から見るほうが描きやすいことも考えられます。Hardy(1999)で外からの視点がよかった結果と、Moradi(2026)で技能によって有利な視点が変わった結果を踏まえると、視点だけを固定して正解にするより、本人が描いている内容を聞く使い方が合います。話しにくければ、説明を長く求めず、次の稽古で動作を確かめる際の話題にとどめます。
覚えたつもりになった時点だけで終わらせず、次の稽古でその部分を動けるか、指導者に見てもらう形にします。これは保持の検査を家庭で再現するというより、頭の中でたどった動きと実行とをつなげるための提案です。思い出せた箇所と途中で迷った箇所があれば、次に指導を受けるときに伝えられます。
追加する時間が負担になる子や、動作を描くことが苦痛な子には、長く続ける課題として押しつけない扱いにします。ここで挙げた研究から、家庭での不快感や負担の頻度はわかっておらず、家庭での配慮として本人の様子を見ます。イメージは稽古への追加です。いつもの実際の練習を保ちながら、本人が思い出したい動作を頭の中で短くたどる時間を試します。
よくある質問
頭の中だけで型を覚えてもよいか
空手の Boz(2026)で突きの正確さが高まったのは、通常の稽古とイメージを並行して行った条件です。一方、Kraeutner(2020)のダーツでは、イメージだけの練習は実際の練習に劣りました。型を頭の中でたどるなら、稽古で習った動作を短く思い出し、その後に実際に行う機会を保つ使い方が考えられます。
自分の姿を外から見るように描くほうがよいのか
Hardy(1999)の空手経験者が新しい型を覚える実験では、外から見るイメージが有利でした。しかし、Moradi(2026)の小学生の球技では、後日に残った成績のよさは技能の種類と視点の組み合わせで異なりました。指導者と扱う動作を確かめ、本人がどんな場面を思い浮かべたかを話すことから始められます。
幼い子でもイメージ練習はできるのか
Abdelkefi(2026)では、同じ幼稚園の 5 歳児が参加し、イメージ練習の群で手先やボール技能、バランスによい結果がありました。幼児を対象に試した実験はあるものの、少人数の同じ園での結果で、年齢による違いは Frank(2023)も今後の課題にしています。家庭で始める判断は年齢の線引きより、本人が習った動きを短く思い出してみたいかというところから考えられます。
この記事の限界
対象は健康な子どもの幅広い運動課題から、発達に困難のある子ども、経験のある空手の実践者まで広がっています。空手の型を扱った実験は少人数の経験者で、幼児の試験は同じ園、小学生の球技の試験は男子に限られます。練習方法に加え、学習直後か後日の保持かという測定時期も違うため、子どもの型の覚え方に最適な視点や実施時間は定まっていません。
頭の中で何を描いたかは、外から動作の成績を測るだけでは細部まで捉えきれません。描いた内容の違いと上達との関係、家庭での短い実践の負担、長く続けた後の保持を結びつけるには、動作の成績に加えて練習の中身を捉える測定も求められます。
参考文献
- Frank C. Imagery training of motor actions in children and adolescents: a meta-analysis. Int Rev Sport Exerc Psychol. 2023;17(2):1356-1377.
- Behrendt F. Effect of Motor Imagery Training on Motor Learning in Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-Analysis. Int J Environ Res Public Health. 2021;18(18):9467.
- Hardy L. Efficacy of external and internal visual imagery perspectives for the enhancement of performance on tasks in which form is important. J Sport Exerc Psychol. 1999;21(2):95-112.
- Boz E. Investigation of the effects of imagery practices on target-aimed punch, motor imagery skills and proprioceptive senses of karate players. Slobozhanskyi Herald of Science and Sport. 2026;30(1):89.
- Abdelkefi I. The Effectiveness of Motor Imagery Training in Improving Motor Skills in Preschool Children: A Randomized Controlled Study. Percept Mot Skills. 2026;133(4):973-996.
- Moradi J. Differential effects of motor imagery perspectives on open and closed basketball skill learning in children. Acta Psychol (Amst). 2026;263:106383.
- Toth AJ. Does mental practice still enhance performance? A 24 Year follow-up and meta-analytic replication and extension. Psychol Sport Exerc. 2020;48:101672.
- Kraeutner SN. Neural and Behavioral Outcomes Differ Following Equivalent Bouts of Motor Imagery or Physical Practice. J Cogn Neurosci. 2020;32(8):1590-1606.
技の名前を調べた次は、組手の痛みと礼儀を稽古場で確かめる
- 向く人: 技の名前や由来を知ったうえで、型と組手で実際に体を動かしたい大人
- 向く人: けがの防ぎ方と礼儀の教え方を見てから、子どもに空手を習わせたい保護者
- 向かない人: 相手を倒す技だけを早く覚えたい人
- 向かない人: 医師から打撃や接触のある運動を止められている人
このサイトはワールド極真会空手連盟 東京支部が制作しています。稽古場はオンザショア立川店(立川駅から徒歩1分・溶岩プレートの床のスタジオ)です。
よくある質問
頭の中だけで型を覚えてもよいか
空手の Boz(2026)で突きの正確さが高まったのは、通常の稽古とイメージを並行して行った条件です。一方、Kraeutner(2020)のダーツでは、イメージだけの練習は実際の練習に劣りました。型を頭の中でたどるなら、稽古で習った動作を短く思い出し、その後に実際に行う機会を保つ使い方が考えられます。
自分の姿を外から見るように描くほうがよいのか
Hardy(1999)の空手経験者が新しい型を覚える実験では、外から見るイメージが有利でした。しかし、Moradi(2026)の小学生の球技では、後日に残った成績のよさは技能の種類と視点の組み合わせで異なりました。指導者と扱う動作を確かめ、本人がどんな場面を思い浮かべたかを話すことから始められます。
幼い子でもイメージ練習はできるのか
Abdelkefi(2026)では、同じ幼稚園の 5 歳児が参加し、イメージ練習の群で手先やボール技能、バランスによい結果がありました。幼児を対象に試した実験はあるものの、少人数の同じ園での結果で、年齢による違いは Frank(2023)も今後の課題にしています。家庭で始める判断は年齢の線引きより、本人が習った動きを短く思い出してみたいかというところから考えられます。