- 帯の色の順番は、流派や道場によって異なる決まりです。
- Deci(1999)は、外から与える報酬と内発的動機づけ、つまり活動そのものに取り組みたい気持ちの関係を調べた 128 本の実験を、メタ分析という方法でまとめました。
- 短期の行動を増やす結果もあります。
- Jones(2006)の質問紙調査では、英国の武道教室 11 か所から 75 人の回答が集まりました。
帯の色が上がると子どものやる気は続くのかQ&A|昇級とごほうびの研究
審査会の後、新しい帯を締めた子どもが結び目を見下ろす場面を思い浮かべてください。次の色を目指す気持ちが、この先の稽古でも続くのかは気になるところです。帯は「できたこと」を認める節目として扱い、やる気の持続を帯だけに任せない、という考え方が研究に沿っています。
ごほうびの研究には、行動が増えた結果と、自分から取り組む行動が減った結果の両方があります。帯をもらった日の喜び、練習の量、技に取り組む意欲を分けると、それぞれの研究が示すことを読み取りやすくなります。
空手の帯の順番は何で決まるのか
帯の色の順番は、流派や道場によって異なる決まりです。どの色を先にするかは、やる気を測った研究で決められた順番ではありません。通う先の昇級の決まりと、報酬が意欲に及ぼす影響は分けて考えます。
昇級を目標にするときは、次の色と併せて、審査で何を見てもらうのかを指導者に聞けます。帯を渡す場面でも、できるようになった動きを具体的に振り返る、という使い方が考えられます。色が変わることと、稽古の中身を言葉にすることを組み合わせる提案です。
ごほうびで自分から取り組む意欲は下がるのか
Deci(1999)は、外から与える報酬と内発的動機づけ、つまり活動そのものに取り組みたい気持ちの関係を調べた 128 本の実験を、メタ分析という方法でまとめました。参加や課題の完了、成績に応じて前もって約束した報酬は、自由な時間に自分から課題に取り組む行動を減らしました。形のある報酬が悪く働く傾向は、大学生より子どもで強く表れました。
一方、ほめ言葉などの肯定的な反応は、自分から選んで取り組む行動と、本人が答える関心を高めました。ごほうびは一括りにできません。同じ研究の中でも、物を渡すことと、取り組みへの肯定的な言葉では結果の向きが違っています。
ただし、中心となったのは短いパズルなどの実験課題であり、空手の帯を渡す場面の試験ではありません。帯をなくすべきかという制度の判断より、何かを得るための条件だけで練習を促していないかを見直す手掛かりとして読むのが適切です。
ごほうびは行動を増やす役にも立たないのか
短期の行動を増やす結果もあります。Hardman(2011)は、英国の小学校 3 校の 386 人を対象に、仲間の行動を手本にする働きかけ、歩数計の目標、ごほうびを組み合わせた条件などを比べました。ごほうびも使った学校では、介入中の歩数の増加が最も大きくなりました。
ところが、ごほうびを減らす段階の終わりには、その学校の歩数は開始時の水準に戻りました。ごほうびを使わず、仲間の手本と歩数の目標を使った学校では歩数が増え続けました。報酬がある期間の反応と、その後の経過を分けて見る必要がある結果です。
Cerasoli(2014)が学校・職場・運動の 183 研究をまとめた分析では、報酬と内からの意欲は、成績に関して必ずしも対立していませんでした。量の多さは報酬、質の高さは内からの意欲とより強く結びついていました。これは課題の成績を見た研究で、同じ活動を長く続けるかを測ったものとは区別します。
| 研究 | 対象 | 比べたもの | わかったこと | 帯に当てはめるときの限界 |
|---|---|---|---|---|
| Deci(1999) | 子ども・大学生などの実験 | 報酬の条件と種類 | 約束した報酬で自発的な行動が減り、ほめ言葉では増加 | 主に短い実験課題 |
| Hardman(2011) | 英国の小学生 | ごほうびを含む条件など | 介入中の増加と終了時の経過が異なる | 学校は 3 校、測定は歩数 |
| Cerasoli(2014) | 学校・職場・運動の参加者 | 報酬・意欲と成績の関係 | 量と質で関係が異なる | 大人の職場の研究が多い |
| Jones(2006) | 英国の武道参加者 | 参加する動機 | 仲間や友人、体力が上位 | 子どもだけの調査ではない |
| Raabe(2019) | 体育教師・少年スポーツ指導者 | 自主性を支える関わりを学ぶ介入 | 指導者の行動は多くの場合改善 | 主な評価は教える側の行動 |
武道に取り組む人は何を動機にしているのか
Jones(2006)の質問紙調査では、英国の武道教室 11 か所から 75 人の回答が集まりました。参加の動機では、仲間とのつながり、友人、体力が上位にあり、級の昇進を含む報酬や地位は中ほどでした。研究は、参加意欲にとって指導者の教え方が重要だと結論づけています。
Raabe(2019)は、体育教師や少年スポーツの指導者が子どもの自主性を支える関わりを学ぶ介入を、系統的レビュー、つまり決めた条件で研究を集めて検討する方法で整理しました。集まった 21 研究では、指導者の行動は多くの場合よくなっていました。帯を渡す仕組みだけでなく、普段の教え方にも目を向ける理由になります。
稽古で試すなら、昇級を節目に、身についた動きと次に取り組みたい動きを本人が言葉にする時間を設ける案があります。報酬の研究を踏まえた実践の案として、帯の色以外にも本人の目標があるかを見ます。
よくある質問
帯を楽しみにするのはよくないことか
楽しみにする気持ちまで否定する必要はありません。報酬が短期の行動を増やした研究もあり、期待する気持ちと、その後の稽古の様子を分けて捉えます。
ほめれば意欲はずっと続くのか
Deci(1999)で高まったのは、実験課題での自発的な行動や関心です。稽古で言葉をかけるなら、例えば「前より動きの順序を覚えたね」と、できた内容に触れる方法が考えられます。
次の昇級まで何を目標にすればよいか
審査で求められることを聞いたうえで、取り組みたい型や動きも本人の目標に加える案があります。次の帯だけを目標に据えるのが合わない子には、稽古の中で試したいことを指導者と話す選択肢があります。
参考文献
- Deci ほか. A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation. Psychol Bull. 1999;125(6):627-68.
- Hardman ほか. Effects of rewards, peer-modelling and pedometer targets on children’s physical activity: a school-based intervention study. Psychol Health. 2011;26(1):3-21.
- Cerasoli ほか. Intrinsic motivation and extrinsic incentives jointly predict performance: a 40-year meta-analysis. Psychol Bull. 2014;140(4):980-1008.
- Jones ほか. Participation motivation in martial artists in the west midlands region of England. J Sports Sci Med. 2006;5(CSSI):28-34.
- Raabe ほか. The Effectiveness of Autonomy Support Interventions With Physical Education Teachers and Youth Sport Coaches: A Systematic Review. J Sport Exerc Psychol. 2019;41(6):345-355.
この記事の限界
対象は実験課題の参加者、小学生、職場の大人などに広がり、武道の調査も子どもに限らない少人数の質問紙調査です。短い課題への関心、歩数、成績、指導者の行動はそれぞれ別の評価で、帯による長期の意欲を直接測るものではありません。
日本の子どもの空手で、帯を渡す意味の伝え方や昇級の間隔が、その後の意欲にどう関係するかは、ここで引いた研究からはまだわかっていません。
技の名前を調べた次は、組手の痛みと礼儀を稽古場で確かめる
- 向く人: 技の名前や由来を知ったうえで、型と組手で実際に体を動かしたい大人
- 向く人: けがの防ぎ方と礼儀の教え方を見てから、子どもに空手を習わせたい保護者
- 向かない人: 相手を倒す技だけを早く覚えたい人
- 向かない人: 医師から打撃や接触のある運動を止められている人
このサイトはワールド極真会空手連盟 東京支部が制作しています。稽古場はオンザショア立川店(立川駅から徒歩1分・溶岩プレートの床のスタジオ)です。
よくある質問
帯を楽しみにするのはよくないことか
楽しみにする気持ちまで否定する必要はありません。報酬が短期の行動を増やした研究もあり、期待する気持ちと、その後の稽古の様子を分けて捉えます。
ほめれば意欲はずっと続くのか
Deci(1999)で高まったのは、実験課題での自発的な行動や関心です。稽古で言葉をかけるなら、例えば「前より動きの順序を覚えたね」と、できた内容に触れる方法が考えられます。
次の昇級まで何を目標にすればよいか
審査で求められることを聞いたうえで、取り組みたい型や動きも本人の目標に加える案があります。次の帯だけを目標に据えるのが合わない子には、稽古の中で試したいことを指導者と話す選択肢があります。