ワールド極真会空手連盟 東京支部立川駅北口の稽古場と、空手を始める前に読む資料室

公開:2026年10月17日/最終更新:2026年10月23日

叱る指導と子どもの稽古|指導者の関わり方と意欲の研究

稽古の帰り道、道着の入った袋を持つ子どもが「今日は先生に叱られた」と話したら、どんな場面だったのか気になるかもしれません。危ない動きを止められたのか、失敗を責められたのか、同じ「叱られた」という言葉でも確かめたい内容は違います。厳しく叱る指導と子どもに選ばせる指導では、意欲や心の健康にどんな違いがあるのでしょうか。

この記事の要点
  • 研究でいう「統制的な指導」は、脅しや罰、過度の管理によって選手を従わせる関わりを指します。
  • Ramis(2017)は、スペインの 9〜18 歳の選手 1,166 人に、指導者の関わり方と競技不安を尋ねました。
  • Zogg(2024)は、米国の大学 123 校の選手 4,119 人を調査しました。
  • Tzioumakis(2026)は、欧州のイングランド、フランス、スペイン、ギリシャで、少年サッカーの指導者 68 人を対象にしました。

叱る指導と子どもの稽古|指導者の関わり方と意欲の研究

稽古の帰り道、道着の入った袋を持つ子どもが「今日は先生に叱られた」と話したら、どんな場面だったのか気になるかもしれません。危ない動きを止められたのか、失敗を責められたのか、同じ「叱られた」という言葉でも確かめたい内容は違います。厳しく叱る指導と子どもに選ばせる指導では、意欲や心の健康にどんな違いがあるのでしょうか。

指導者を見る手掛かりは、声の強さだけでなく、理由を説明し、選択の機会を設け、脅しや罰で子どもを動かしていないかという関わりの中身です。 若い選手の調査では、統制的な関わりが強いと感じることと、不安や燃え尽きが結びついていました。一方、指導者向けの研修では改善した項目も、変化が続かなかった項目もあります。

強く注意する場面を見ただけで指導全体を決めるより、その前後の説明や、子どもの発言への応答まで見ることを勧めます。叱るという言葉だけでは足りません。研究で扱う関わり方を具体的な行動に置き換えると、見学で見る点と、問題が起きたときに相談する点を分けて考えられます。

厳しさを、脅し・罰・説明に分けて見る

研究でいう「統制的な指導」は、脅しや罰、過度の管理によって選手を従わせる関わりを指します。課題の難しさや練習量の多さを表す言葉ではなく、人をどう動かそうとしているかに注目した言葉です。礼儀を教えることや動作の間違いを指摘することも、何をどう伝えているかに分けて見る必要があります。

これに対して「自律を支える関わり」は、本人が納得して行動を選べるように支えることです。子どもに選択の機会を設けること、課題に取り組む理由を説明することなどが、見学で注目する点になります。技術の指示があるかどうかに加えて、その指示を子どもが理解するための説明があるかを見ます。

たとえば、危ない動作を見て直ちに止め、そのあとに危険だった動きと次の課題を説明する場面を考えます。別の場面として、失敗した子どもを罰で脅し、質問にも応じず同じ動作を命じる場合を考えます。どちらも外からは強い注意に見えることがありますが、見るべき言葉と応答は異なります。

選ばせる場面を見るときも、選択肢を口にしたことだけで判断しないようにします。選んだ理由を聞いているか、別の選択をした子どもに罰をほのめかしていないかまで観察する、という使い方です。関わりを具体的に確かめるために、選択肢と選んだ後の対応を続けて見ます。

安全のために止める指示と、課題の進め方を本人に選ばせる機会は、場面を分けて検討できます。見学では、何を全員に求め、どこに選択の余地があるのかを説明してもらいます。「厳しい」「優しい」という印象に、実際の指示と説明の内容を添えて見ていきます。

統制的な指導と不安・燃え尽きの結びつき

Ramis(2017)は、スペインの 9〜18 歳の選手 1,166 人に、指導者の関わり方と競技不安を尋ねました。競技不安とは、競技の場面で感じる体の緊張、心配、集中の乱れなどです。統制的な関わりが強いと感じる選手ほど、これらの不安がいずれも高いという結果でした。

この調査で答えたのは子ども本人です。指導者の行動を第三者が数えた記録と照合したのではなく、本人がどう感じているかを質問紙で捉えています。また、やらされている気持ちを経由して不安に至るという道筋については、結果が明瞭ではありませんでした。

Morales-Sánchez(2020)が調べたのは、スペインの 12〜17 歳の男子サッカー選手 103 人です。統制的な関わりは、自分で決めたい、できると感じたい、人とつながりたいという「基本的な心理欲求」が妨げられることと結びつき、その妨げは燃え尽きとも結びついていました。燃え尽きとは、競技に対する消耗や意欲の低下などを伴う状態を指します。

この結果を読むときは、子どもが指示に従ったかだけでなく、その過程で何を感じたかにも目を向けられます。課題を選ぶ余地があったか、できた点を認められたか、仲間との関わりを保てたかという視点です。研究の概念を見学や相談の言葉に置き換えると、本人に尋ねたい経験が具体的になります。

両研究は、同じ時点で関わり方と心理状態を調べる「横断研究」です。指導が先にあり不安や燃え尽きが後に生じたという順序や因果は確定せず、自己申告による関連を示しています。対象も一般の競技や男子サッカーであり、空手の子どもを追った結果とは区別して読む必要があります。

暴言・暴力は、指導の好みだけで扱わない

Zogg(2024)は、米国の大学 123 校の選手 4,119 人を調査しました。回答した選手の 9.8% が、大学での競技生活中に身体的・心理的なものを含む何らかの暴力・虐待を経験したと答えています。経験した選手では、燃え尽きなどの指標が悪いという関連がありました。

この数字が表しているのは、選手が経験を報告した割合です。加害者は指導者に限定されておらず、指導者が暴力をふるう割合を数えたものではありません。研究は、指導の仕方の違いによって暴力経験と心理状態の結びつきが変わる可能性を示し、指導者が安全な環境づくりで担う役割に注目しています。

対象の平均年齢は 19.3 歳で、大学生という大人の競技環境を扱っています。回答率は 21.2% と低く、参加した選手の経験が結果に強く反映される調査です。暴力経験も心理状態も自己申告で集めているため、学校全体の状況を直接観察した調査とは性質が違います。

稽古で暴言や暴力を受けた場合は、「厳しい教え方が合うか」という好みの話に収めず、道場の責任者や外部の相談窓口に相談します。稽古の前に体調を崩すことが続く場合も、相談を始める目安です。相談先を選ぶときは、問題の当事者以外に話を受ける担当者がいるかを確かめます。

相談の際には、いつ、どの場面で、誰からどんな言葉や行動を受けたかを伝えます。「指導が厳しかった」という評価と、実際に起きた出来事を分けて伝える形です。暴言や暴力を受ける環境での参加を続けて、本人が慣れるかどうかを試す必要はありません。

指導者の研修で変わる点と、残る課題

Tzioumakis(2026)は、欧州のイングランド、フランス、スペイン、ギリシャで、少年サッカーの指導者 68 人を対象にしました。子どもの自律を支える関わりを学ぶ研修を受ける群と対照群に、無作為に分けて比べた試験です。無作為化とは、くじ引きのような方法で群を分け、初めからある違いが片方に偏りにくくする方法です。

この試験は、指導者本人の感想だけに頼らず、実際の指導の様子を観察して評価した点が特徴です。研修群では、勝ち負けばかりを強調する関わりが減りました。一方、自律を支える関わりや人とのつながりを支える関わりの増加は、研修 1 か月後の一時的なものでした。

評価されたのは指導の行動であり、子どもの意欲や心の健康そのものではありません。研修の成果にも、否定的な関わりが減ることと、肯定的な関わりが増え続けることという違いがあります。研究者は、良い実践を保ち、否定的な行動を減らすための継続的な支援の必要性を指摘しています。

Mosqueda(2026)は、メキシコの学校の部活動で、指導者 25 人が 7 か月の研修を受けた前後を比べました。選手は 12〜16 歳で、開始時の 314 人のうち、終了後の評価まで参加したのは 143 人、追跡できた割合は 45.5% でした。こちらでは、選手自身が指導や仲間との関わりをどう感じるかを調べています。

選ばせてもらえる感じや仲間とのつながりには、小〜中程度の改善がありました。できると感じる気持ちと、チームのまとまりの一部は変化しませんでした。比べる群がない前後比較で、最後まで回答した選手も限られるため、研修以外の変化や途中で回答しなくなった選手の経験が検討課題になります。

研修を評価するなら、受講歴に加えて、どの行動を振り返り、その後どう支援を受けているかを聞くことを勧めます。学校やチームを対象にした研究でも、改善の大きさや持続は項目によって異なりました。受講という出来事から、その後の日々の関わりへと確認する対象を進めます。

研究を比べると、見るべき違いがある

指導者の関わりを調べる研究には、選手の受け止め方を尋ねる調査と、研修後の行動を観察する試験があります。意欲、不安、燃え尽き、指導行動はそれぞれ別の結果であり、何が改善したかを分ける必要があります。次の表では、対象と測り方を並べます。

研究(著者 年) 対象と人数 設計 わかったこと(関わり方・研修についての知見) 弱さ
Ramis 2017 スペインの 9〜18 歳、1,166 人 横断研究 統制的な関わりの感じ方と競技不安が関連 自己申告、因果の順序が不明
Morales-Sánchez 2020 スペインの男子サッカー選手 103 人 横断研究 心理欲求の妨げと燃え尽きが関連 男子のみ、人数が少ない、自己申告
Zogg 2024 米国の大学選手 4,119 人 横断調査 暴力・虐待の経験と燃え尽きなどが関連 大人が対象、回答率 21.2%
Tzioumakis 2026 欧州の少年サッカー指導者 68 人 無作為化比較試験、観察による評価 勝敗の強調が減り、支援の一部は一時的に増加 子どもの心理状態を直接測定していない
Mosqueda 2026 メキシコの選手 314 人、終了後 143 人 研修前後の比較 自律やつながりの感じ方に小〜中程度の改善 対照群なし、追跡割合 45.5%

見学では、失敗した直後と質問への応答を見る

見学で確認する場面を選ぶなら、子どもが失敗した直後の関わりが候補になります。何が課題だったのかを説明するか、次に試すことを示すか、脅しや罰を使って動かそうとするかを見ます。声が大きかったという記憶に加えて、その前後の言葉を具体的に捉える見方です。

次に、子どもが質問したり、示された選択肢から選んだりした場面を見ます。指導者が説明を返すか、選んだ内容を受け止めるか、その選択を理由に責めていないかを確認します。自律の支援を、ただ自由に動いている様子と同じ意味で捉えず、選ぶ過程への関わりとして見ていきます。

たとえば、同じ課題を繰り返すよう求めたとき、何を目指して繰り返すのかを説明してもらいます。子どもが難しいと伝えた場合には、課題の段階を調整する話ができるかも確認する候補です。ここで挙げた問いかけは、研究で扱った理由の説明や選択の機会を、稽古の見学に移した提案です。

大人の初心者が見る場合も、質問にどう応じるか、指示の理由をどう説明するかは確認できます。一方、子どもを対象にした心理欲求の調査と大学選手の暴力経験の調査では、年齢も競技経験も違っています。初心者への説明を見たい場合は、経験豊富な選手への指示だけで判断せず、実際に初心者にどう課題を示しているかに目を向けます。

見学のあとに尋ねる内容は、見た行動に結びつけます。失敗後の説明が気になったならその課題の目的を、選択の機会が気になったなら本人が決められる範囲を聞きます。言葉で示された方針と、稽古中の応答が対応しているかを照らし合わせます。

暴言・暴力があった場合や、稽古前の不調が繰り返される場合は、見学の印象を比較する段階から相談へ移ります。責任者への連絡方法に加えて、外部に相談できる経路も確かめます。指導者を選ぶときの中心に置くのは、子どもが失敗や疑問を示したとき、どんな説明と対応が返ってくるかです。

よくある質問

大きな声で叱る指導者は避けた方がよいか

声の大きさだけで決めず、叱った理由と、その後の説明を確認します。Ramis(2017)が扱ったのは、脅しや罰、過度の管理を含む関わりの受け止め方と不安の関連です。安全のために動きを止める注意なのか、失敗した子どもを脅して動かす行為なのかを分けて見ます。暴言や暴力を受けた場合は、教え方の好みとして保留せず、責任者や外部の相談窓口に相談します。

子どもに選ばせれば意欲は必ず上がるか

選ばせる機会は見るべき点ですが、意欲の変化には複数の側面があります。Mosqueda(2026)の研修前後の比較では、自律やつながりの感じ方に改善があった一方、できると感じる気持ちには変化がありませんでした。見学では、選択肢の提示に加え、課題の理由の説明や、子どもが選んだ後の対応も合わせて見ます。

研修を受けた指導者なら安心して任せられるか

研修の受講歴は確認できますが、現在の行動と継続的な振り返りも見たい点です。Tzioumakis(2026)では、支援的な関わりの増加に一時的なものがありました。どのような指導を学んだかに加え、普段の指導を誰が見て振り返るのか、問題が起きたときに誰が相談を受けるのかを尋ねます。

参考文献

  1. Ramis Y ほか. The Effect of Coaches’ Controlling Style on the Competitive Anxiety of Young Athletes. Front Psychol. 2017;8:572.
  2. Morales-Sánchez V ほか. Relationships between Controlling Interpersonal Coaching Style, Basic Psychological Need Thwarting, and Burnout, in Adolescent Soccer Players. Int J Environ Res Public Health. 2020;17(13):E4909.
  3. Zogg CK ほか. Experiences of Interpersonal Violence in Sport and Perceived Coaching Style Among College Athletes. JAMA Netw Open. 2024;7(1):e2350248.
  4. Tzioumakis YS ほか. Effect of a theory-based coach education program on the objectively assessed motivational climate in grassroots football across four European countries: results from the Promoting Adolescent Physical Activity (PAPA) project. Front Psychol. 2026;17:1563931.
  5. Mosqueda S ほか. Effects of the Empowering Coaching™ training program on the coach created motivational climate, psychological need satisfaction and team cohesion. Front Psychol. 2026;17:1566111.

この記事の限界

対象は海外の競技選手や指導者で、少年サッカー、学校の部活動、大学スポーツに偏っており、日本の子どもの空手を直接調べた研究は含まれていません。関わり方と不安・燃え尽きの関連を扱う調査は同じ時点の自己申告が中心で、指導者の行動と子どもの心理状態が時間とともにどう影響し合うかは未解明です。

研修の研究にも支援の増加が一時的だった試験や、比較群がなく追跡できた選手が限られる調査があり、見学の提案は個人の心身の状態を診断する医療上の助言ではありません。選択の機会や理由の説明を日常の稽古で支え続けたとき、日本の子どもの意欲や心の健康にどれほど長く変化が続くかが残る課題です。

技の名前を調べた次は、組手の痛みと礼儀を稽古場で確かめる

  • 向く人: 技の名前や由来を知ったうえで、型と組手で実際に体を動かしたい大人
  • 向く人: けがの防ぎ方と礼儀の教え方を見てから、子どもに空手を習わせたい保護者
  • 向かない人: 相手を倒す技だけを早く覚えたい人
  • 向かない人: 医師から打撃や接触のある運動を止められている人

このサイトはワールド極真会空手連盟 東京支部が制作しています。稽古場はオンザショア立川店(立川駅から徒歩1分・溶岩プレートの床のスタジオ)です。

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よくある質問

大きな声で叱る指導者は避けた方がよいか

声の大きさだけで決めず、叱った理由と、その後の説明を確認します。Ramis(2017)が扱ったのは、脅しや罰、過度の管理を含む関わりの受け止め方と不安の関連です。安全のために動きを止める注意なのか、失敗した子どもを脅して動かす行為なのかを分けて見ます。暴言や暴力を受けた場合は、教え方の好みとして保留せず、責任者や外部の相談窓口に相談します。

子どもに選ばせれば意欲は必ず上がるか

選ばせる機会は見るべき点ですが、意欲の変化には複数の側面があります。Mosqueda(2026)の研修前後の比較では、自律やつながりの感じ方に改善があった一方、できると感じる気持ちには変化がありませんでした。見学では、選択肢の提示に加え、課題の理由の説明や、子どもが選んだ後の対応も合わせて見ます。

研修を受けた指導者なら安心して任せられるか

研修の受講歴は確認できますが、現在の行動と継続的な振り返りも見たい点です。Tzioumakis(2026)では、支援的な関わりの増加に一時的なものがありました。どのような指導を学んだかに加え、普段の指導を誰が見て振り返るのか、問題が起きたときに誰が相談を受けるのかを尋ねます。